康熙字典解説
康熙字典の原典を見る(第 1076 ページ)
【申集中】【虫部】虫;康熙筆画:18;頁碼:1076 頁 19 行
【唐韻】許偉切、【集韻】詡鬼切、音「卉」に読む。
【広韻】鱗甲ある動物の総称なり。
【説文解字】一名を蝮蛇といい、身広さ三寸、頭は親指のごとし。字形はその伏せる状に象る。万物の微細なる生物、脚あるもの、毛あるもの、殻なきもの、甲あるもの、鱗あるもの、皆「虫」の字を以て象徴とす。「虫」に関係する字は皆虫部に属す。
【玉篇】古文の「虺」の字なり。詳説は三画の部を参照されよ。
【佩觿集】蛇虫を表す「虫」と虫豸を表す「蟲」とは異なり、混同すべからずとす。
按ずるに、『説文解字』『玉篇』『類篇』等の書は、「虫」と「蟲」を別々の部首に分けて載せる。「虫」は吁鬼切にて「虺」の古字なり。「蟲」は持中切なり。両者の読み全く異なり、意義も各々異なる。
『字彙』『正字通』は「虫」「蟲」の二部を「虫」部に併合せり。古人の分部の本意には背くといえども、閲覧に便なるがゆえ、暫くこの旧例に従うべし。『六書正譌』の「虫」は即ち「蟲」の略字なりとする説は大いに誤れり。
蟲
【唐韻】直弓切、【集韻】【韻会】【正韻】持中切、「種」の音に読む。
【説文解字】字形は三つの「虫」より成り、象形なり。「蟲」に関係する字は皆蟲部に属す。
【大戴礼記】に曰く、羽ある虫三百六十、鳳凰その長たり。毛ある虫三百六十、麒麟その長たり。甲ある虫三百六十、神亀その長たり。鱗ある虫三百六十、蛟竜その長たり。毛なく甲なき裸虫三百六十、聖人その長たり。
【爾雅・釈虫】足あるを「蟲」といい、足なきを「豸」という。
【周礼・冬官考工記・梓人】に曰く、外骨・内骨あり、却行・仄行あり、連行・紆行あり、以て鳴く者、以て注ぐ者、以て股鳴く者、以て翼鳴く者、以て脛鳴く者、以て胸鳴く者、此れ皆小虫の類にして、彫刻の飾りと為す所なり。
【大戴礼記】に曰く、二九十八、八は風に当たり、風は虫を主る。故に虫は八月に変ず。
【荀子・勧学篇】に曰く、肉腐れば虫生ず。
又【詩経・大雅】に「蘊隆虫虫」の句あり。
【伝】に曰く、「虫虫」は熱気蒸騰する状を形容するなり。
又「桃虫」、鳥名なり。
【詩経・周頌】に曰く、「肇允彼桃虫」。
【伝】に曰く、桃虫は即ち鷦鷯にして、小鸟より大鳥となる鳥なり。
又【尚書・益稷】に曰く、「華虫作絵」。
【孔註】に曰く、「華虫」は雉なり。
又地名なり。
【左伝・昭公十九年】に曰く、宋公邾を伐ち、虫邑を囲むこと三月。
【註】に曰く、虫は邾の邑なり。
又書名なり。
【魏志・裴松之註】に曰く、邯鄲淳は蒼頡篇・爾雅及び虫篆を書くに善し。
又姓なり。
【前漢書・功臣表】に曲成侯虫達あり。
又直衆切、「仲」の音に読む。「蚛」と同じく、虫が物を蝕むの義なり。
又【集韻】徒冬切、「彤」の音に読む。
【爾雅・釈訓】「爞爞」は熱気薫蒸するの義なり。「爞」は時に「蟲」とも書く。
【群経音弁】「蘊隆虫虫」の「虫」は又徒冬切に読む。
【韻会】に曰く、俗に「虫」と書くは非なり。
蟲考証:
【大戴礼記】「八主虫、故虫八月」。謹んで原文を「八主風、風主虫」と改む。
【爾雅・釈訓】「爞爞董也」。謹んで原文を「爞爞薰也」と改む。