【酉集上】【言部】訾;康熙筆画:12;頁碼:1153 頁 01 行
【唐韻】将此切。【集韻】【韻会】蒋氏切。【正韻】祖似切。音は子。【説文】心に満足せず、意にかなわざるを指す。『詩・小雅』に「翕翕訾訾」と引く。【徐鍇曰】心中事に満足せざるをいう。今流布する本は皆「訿」に作る。【爾雅・釈訓】「翕翕訾訾」は、臣下職事につかざること。『詩』の『釈文』に『韓詩』を引いて不善之意とす。【朱伝】「潝潝」は互いに附和するなり。「訿訿」は互いに誹謗するなり。
また【玉篇】誹謗す。【礼記・曲礼】「苟も訾ず」。【疏】互いに毀謗するを訾と謂う。【管子・形勢解】賢者を誹謗するを訾と謂う。
また【集韻】本は「疵」に作る。【荀子・不苟篇】義に出て直ちに人の過ちを指すは、誹謗挑剔に非ず。【韻会】疵毀の「疵」字、今本相承けて「訾」を作りて毀謗すること久し。
また悪む。【管子・形勢篇】食を悪む者は身体肥えず。【注】食を悪む者は憂愁嫌悪により疾を生ず、故に肥えざるなり。
また放縦す。【荀子・非十二子篇】俗に従わざるを以て俗と為すは、正道に背き踵を上げてその志を放縦する者なり。【注】訾は「恣」に読む。跂訾は、踵を上げて世俗に背きその意志を放縦することをいう。
また【広韻】即移切。【集韻】【韻会】将支切。音は紫(平声)。義同じ。
また【類篇】思慮す、考慮す。【礼記・少儀】貴器を量らず。【注】訾は思慮なり。【唐書・李勣伝】将を選するに臨み、必ず奇偉福相なる相貌を仔細に観察して派遣す。【音義】訾は思慮なり。
また量る、計る。【前漢書・枚乗伝】呉兵を発して漢と較ぶ。【李奇曰】量るなり。【商子・墾令篇】糧を量って税を収む。【注】計るなり。
また限度。【管子・君臣篇】吏嗇夫全く限定の规程と法律に依りて事を行う。【注】訾は限度なり。程は標準なり。
また毛病、欠点。【礼記・檀弓】故に子の譏る所の礼に関するは、亦た礼自体の毛病に非ず。【注】病は毛病なり。
また【揚子・方言】何ぞ。湘潭の一帯、荊州の南部辺遠の地、「何」を「曾」と呼び、或いは「訾」と呼ぶ。猶お中原の「何为」と言うが如し。【注】今江東の人言語亦た「訾為」と言い、音は「斯」に似たり。
また地名。【左伝・僖公十八年】而して軍は訾婁に駐す。【注】衛の城邑。
また【文公十六年】訾枝を侵す。【注】楚の城邑。
また【襄公十年】楚は訾母に於いて宋師を攻む。【注】宋の地名。
また【昭公二十三年】単子は訾を占領す。【注】訾は河南鞏県の西南にある訾城なり。『路史』に云う:訾に二つあり、西訾は維地に在り、東訾は鞏地に在り。
また姓。【前漢書・功臣表】楼虚侯訾順有り。
また複姓。【潜夫論】訾辱氏は、趙の嬴姓なり。
また「赀」に同じ。銭財なり。【前漢書・司馬相如伝】名を改めて相如とし、銭財を以て官に捐じて郎官と為る。【注】訾は「赀」に読み同じく、銭財なり。家財多きを以て、郎に授官せらる。
また通じて「茈」に作る。苻茈は草名。【後漢書・劉聖公伝】南方饑饉により、百姓鳧茈を掘って食す。【注】『続漢書』は「苻訾」に作る。
また「觜」に通ず。娵訾は北方の星宿名。亦た「娵觜」と作る。詳らかに角部の「觜」字の注に見る。
また【集韻】【韻会】才支切。音は疵。亦た誹謗の義なり。【正韻】才資切。音は茨。義同じ。【荘子・山木篇】誉なく訾なし。徐邈此の読みを為す。
また【正韻】「啙」に同じ。【史記・貨殖伝】呰窳として偷生す。【前漢書・地理志】は「啙」に作る。【徐広曰】啙窳は、苟且懶惰なり。【応劭曰】啙は弱し。【師古曰】短し。
また【集韻】【正韻】津私切。音は咨。亦た思慮の義なり。
また【正字通】「咨」に通ず。【前漢書・礼楽志】「訾黄よ、汝何ぞ下らざるや」。【師古注】訾は感嘆の詞なり。黄は乗黄(神馬の名)なり。乗黄の下らざるを感嘆す。
また【集韻】子礼切。音は済。【博雅】誹謗す。
また【字彙補】宗呉切。音は租。足訾は獣名。【山海経賛】人を見て自ら其名を呼ぶ足訾。【集韻】或いは「

」に作り、亦た「訿」に作る。【字彙補】又「

」に作るも、非なり。
考証:
【爾雅・釈言】「翕翕訾訾、莫供職也」。謹んで按ずるに原書の「釈言」は「釈訓」に改むべし。
【韓詩外伝】「不善之意」。謹んで按ずるに是れ『韓詩章句』にして『韓詩外伝』に非ず。謹んで原書に照らし『詩』の『釈文』に『韓詩』を引いて云くと改む。
【左伝・僖公十八年】「従師于訾婁」。謹んで原文に照らし「従」の字を「而後」の二字に改む。
【襄公九年】「楚師伐宋師于訾母」。謹んで『左伝』の原文に照らし九年を十年に改む。「楚」の字の下「師」の字を略す。
【荘子・山水篇】「无誉无訾」。謹んで原文に照らし「山水篇」を「山木篇」に改む。