康熙字典解説
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【辰集下】【毛字部】氂;康煕筆画:15;頁碼:595 頁 46 行
『唐韻』里之切、『集韻』『韻会』陵之切、音は厘。『説文』に「牦牛の尾」とある。『周礼・春官・楽師』の「旄舞」の注に「旄舞とは、牦牛の尾を用いて舞うことである」とある。疏に「『山海経』に曰く、潘侯山に獣あり、牛に似て四肢の節に長毛あり、これを旄牛と名づく」とある。
また『山海経』に「荊山には牦牛多し」とある。注に「旄は牛の類にして黒色、西南の徼外に出ず」とある。〔杜甫の詩に〕「天馬踠足して旄牛に従う」とある。
また馬の尾も亦た氂という。『淮南子・説山訓』に「氂を以て玉を切る」とある。注に「氂は即ち馬尾なり」とある。
また堅く巻ける毛を指す。『前漢書・王莽伝』に「氂を以て衣に充つ」とある。注に師古曰く「堅く巻ける毛を氂といい、紙衣の中に充てて膨らまし支えしむるなり」とある。
また『前漢書・五行志』に「天漢三年八月、天より白き氂降る」とある。
また『小爾雅』に「雑色の毛を氂という」とある。
また長毛を指す。『後漢書・岑彭伝』に「岑熙、魏郡太守に転じ、百姓歌って曰く、犬吠えても驚かず、足下に氂生ず」とある。注に「氂は長毛なり。犬人を追って吠えざるが故に、足下に悠々として長毛生ずるなり」とある。
また毛織物を指す。『爾雅・釈言』に「氂は罽なり(罽は一種の毛織物)」とある。郭璞の注に「毛氂は罽を作るに用いる」とあり、邢昺の疏に「毛を編んで作る。今の毛毯の如く、馬を繋ぐ革帯に用いる」とある。
また事物の微細なるを形容するにも亦た「氂」を用いる。『列子・殷湯篇』に「一氂を以て蝨を窓に懸く」とあり、曹植『九華扇賦』に「篾を剖きて氂分つ」とある。
また「厘」の字と通ず。『史記・蘇秦伝』に「毫氂を伐たざれば、将に斧斤を用うべし」とあり、『前漢書・律暦志』に「毫氂も差えず」とある。注に孟康曰く「十毫の広さを一厘とす」とある。
また『広韻』莫袍切、『集韻』『韻会』謨袍切、音は毛。義同じ。亦た「斄」「髦」「犛」と書く。
また『集韻』郎才切、音は来。義同じ。
按ずるに、『周礼・春官』の注に「氂、音は毛」とあり、劉昌宗は「来」と読み、沈重は「貍」と読み、或いは「茅」と読み、或いは「犛」と書き、或いは「斄」と書く。『荘子・逍遥遊』の「斄牛」を考証するに、其の大なること天辺の雲の如しとあり。注に郭象は「呂之反」(即ち「離」の音)と読み、徐邈・李軌は「来」と読み、又「離」と読み、司馬彪は「即ち旄牛なり」と言う。此により知るべし、諸家の注音異なると雖も、其の義は相通ずることを。