【辰集下】【止字部】歩;康熙筆画:7;頁碼:574 頁第 15
【唐韻】【正韻】薄故切【集韻】【韻会】蒲故切、音は捕。
【説文】行くなり。
【書・武成】王朝げて周より歩す。
【伝】歩は行くことなり。『正義』に曰く、『爾雅・釈宮』に云う、堂上を行と謂い、堂下を歩と謂う。是れ相対して言うところのものなれば、分けて言えば通ずるを得、故に歩即ち行の義なり。
【楚辞・招魂】騎歩羅なるかな。
【注】馬に乗るを騎と為し、徒歩して行くを歩と為す。
又【小爾雅】跬は一挙足なり。跬を倍するを歩と謂う。
【白虎通】人の脚長三尺は天地人に法る。両脚各々一たび邁ぐるを歩と為し、以て陰陽を具う。
【周礼・夏官】射人狸歩を以て三侯を張る。
【注】鄭司農云く、狸歩とは一挙足を一步と為すを謂い、当今の半步に相当す。
又【司馬法】六尺を一步と為し、百歩を一畝と為す。
【礼・王制】古は周尺八尺を一步と為し、今は周尺六尺四寸を一步と為す。
【正義に曰く】古は八寸を一尺と為し、周尺八尺を一步と為せば、則ち一步は六尺四寸なり。
【史記・秦始皇本紀】数を六を以て紀と為し、六尺を一步と為す。
【注】索隠に曰く、『管子』『司馬法』皆六尺を一步と為すと云う、独り秦のみ此の規定に非ず。又『王制』に八尺を一步と為すと云い、今六尺四寸を一步と為すは、一步の尺数亦同じからず。
又車駕して人牽きて行うを歩と謂う。
【韻会】世人人を牽く車を歩輦と称すは、人扛げて行くを言い、馬を用いざるを謂う。
又徐行するを歩と謂う。
【屈原・離騒】余が馬を蘭皋に歩ましむ。
【説苑・建本篇】走る者は速く、歩く者は遅し。
又小歩して疾く行くを趨と為し、大步して行くを歩と為す。
【荘子・田子方】子歩めば吾も亦歩み、子馳すれば吾も亦馳す。
又【任昉・述異記】水辺を歩と謂う。上虞県に石駝歩あり、呉中に瓜歩あり、呉江中に魚歩・亀歩あり、湘中に霊妃歩あり。按ずるに呉楚の間水辺を歩と称するは、言語の訛変なり。
【水経注】贛水豫章郡の北を流れて津歩と為る。歩は水中の小陸洲なり。
【青箱雑記】嶺南は郷村の市を墟と称し、水辺の碼頭を歩と称す。
又【柳宗元・鉄炉歩志】江辺、凡そ舟纜を繋ぎ、人の上下する所を歩と曰う。
【韓愈・孔戣墓誌】外国の商船来て泊まる碼頭には、下碇の税あり。「埠」に通ず。今の人は船商の經紀を埠頭と称す。埠の音歩の如し。
又【爾雅・釈楽】鼓のみを撃つを歩と謂う。
【疏】凡そ八音備わるを楽と謂う。一器独り奏するは楽と称すべからず。
又才特に卓越せるを独歩と謂う。
【晋書・王坦之伝】江東に独歩するは王文度なり。
又馬歩は馬に災をもたらす神を指す。一説に行路の神を指す。
【周礼・夏官・校人】冬に馬歩を祭る。
又人物の災の神も皆歩と称す。
【周礼・夏官・校人疏】所謂「冥之歩」「人鬼之歩」とは此类の神なり。
又【地官・族師・祭酺注】酺は人畜に災をもたらす神なり。旧書は「歩」と書く、大概歩と酺は字異なれども音義相同じ。
又馬を遛するを歩馬と謂う。
【左伝・襄公二十六年】左師夫人の歩馬者を見る。
又牽きて行く。
【礼・曲礼】君の乗る馬を牽きて路に在っては必ず中道を行う。
又行軍するを歩師と謂う。
【左伝・僖公三十三年】寡君聞く、子が歩師して我が国を経んとするを。
又次序に爵を斟みて飲むを歩爵と謂う。
【礼・少儀】遍く爵を歩まざれば、先に肴を嘗めず。
又暦法を推算するを歩暦と謂う。
【左伝・文公元年疏】日月天に運ぶは、猶人の地に行走するが如し、故に暦を推算するを歩暦と謂う。
【後漢書・楊厚伝】同郡の鄭伯山に従い、河図洛書及び天文歩算の法を学ぶ。
【陸機・演連珠】天象を観て日影を測れば、則ち长短度量すべし。
又『律暦』は書名なり、五星を五歩と謂う。【漢制考】に見ゆ。
又運命、国運を国歩と謂い、天運を天歩と謂う。
【詩・小雅】国歩斯艱にして資財尽く。
【又】天歩艱難なり。
又高位に登るを改歩と謂う。
【国語】佩玉を改め、歩の節を変える(即位を指す)。
又步驟。
【後漢書・曹褒伝】三皇五帝三王、步驟同じからず、優劣別あり。
【注】『孝経鉤命決』に云う、三皇は「歩」、五帝は「驟」、三王は「馳」なり。宋均注に云う、歩は徳施すこと日月の運行が如く従容たり;時事益々順調にして日月の運行も亦速きを「驟」と為す;思慮勤めて怠らず、日月の運行「馳」が如し、是れ優劣の別なり。
又姓。
【広韻】晋に歩揚あり、食邑歩地に在り、後遂に歩を氏と為す。孔子の弟子に歩叔乗あり、三国呉に丞相歩騭あり。
又三字姓。
【後魏書】歩六孤氏あり、後陸氏に改む。
又西方歩鹿根氏あり、後歩氏に改む。
又【北斉書】歩大汗氏あり。
又百歩は渓流の名。
【広輿記】台州臨海県に在り、悪溪とも曰う。
又千歩は香料の名。
【任昉・述異記】南海山中千歩香を生ず、之を佩ぐれば其の香千歩に聞ゆ。今海辺に千歩草あり、即ち其の類なり。『雑貢籍』に云う、南郡千歩香を貢ず。
又歩光は剣の名、【越絶書】に見ゆ。
又歩揺は婦女の首飾の名、【采蘭雑誌】に見ゆ。
【俗書正訛】「

」に従うは「止」の反写なり。「少」に従うは誤りなり。この「

」の字は独り「歩」の字にのみ用いられ、日本人「歩」を簡化して「歩」と為すは、「歩」字の使用を便ならしむるなり。