康熙字典解説
康熙字典の原典を見る(第 399 ページ)
【卯集上】【心部】慮;康熙筆画 15;頁碼 399 頁下段 34。『唐韻』『集韻』『韻会』『正韻』良据切、音鑢。『説文』謀思なり。思に従ひ、虍声。図る所あるを慮と曰ふ。慮は猶ほ縷のごとし。『増韻』憂なり、疑なり。『書・太甲』慮ずんば胡ぞ獲ん。【注】謹んで思慮せしめんと欲するなり。『大学』安じて而る後に能く慮ず。【朱注】事を処すること精しく詳らかなるを謂ふ。また揣度し、估量す。『揚子・太経』督を立てて慮ず。【注】督は是れ糾正なり、慮は是れ揣度なり。正しい標準を用いて揣度す。また総計することを亡慮と曰ふ。『前漢書・書注』概括の辞にして、計算思慮せずして其の大略を知るを謂ふ。また軍前に持つ幡を慮無と曰ふ。『左伝・宣公十二年』前茅慮無。【注】有無の状況を考慮す。『正義』未だ起こらざる事を思慮して、人をして知らしめ且つ之が為に備えしむるを説明す。また『釈名』慮は旅なり、旅は衆多の義なり。『易・繋辞』一致して百慮す。【注】思慮は衆多の事に渉り、同一の理をもって之を統一す。また姓なり。『左伝』南蒯の臣に慮癸あり。また『広韻』力居切、『集韻』『韻会』『正韻』凌如切、音閭。『正韻』思慮。『淮南子・原道訓』恬然として思無く、澹然として慮無し。天を以て蓋とし、地を以て輿とす。また樹木の名。『爾雅・釈木』諸慮は山櫐なり。また地名。隆慮は河内に在り。無慮は遼東に在り。取慮は臨淮に在り。且慮は遼西に在り。昌慮は海東に在り。隆は音林、取は音趣、且は音苴。また『古今字考』両挙切、音呂。『箕山歌』日月運照して記睹せざること靡し。其の間を遊放す、何ぞ却慮せん。また『正字通』盧谷切、音録。『唐書・百官志』大理寺は断案審案を掌り、凡そ囚人を関押せば、五日に一たび訊問覆核す。『前漢書・隽不疑伝』毎に属県を巡行し、囚徒を審録して帰る。【師古注】録囚は今慮囚と曰ふ。本は「録」の声の去声なるのみ。近世の俗其の義を明かさず、誤って思慮の「慮」と為し、其の本を失へり。按ずるに師古が此の言は文字を知るに近しといへども、実に音韻に通ぜず。只音韻に通ぜざるを以て、亦た文字の本源を知るべからず。蓋し毎字元来四声を具ふ。例えば「慮」字平声より韻を起こす。閭・呂・慮・録なれば、「閭」字は「慮」字の平声、「呂」字は「慮」字の上声、「録」字は「慮」字の入声なり。「慮」の本義は謀り思ふなり。しかれども詳細に審察するの義を兼ねたるを以て、故に『漢書』の「録囚」即ち「慮囚」なり。「慮」字元来入声を具へ、「録」の音有るもの、豈必ず去声に専属して而る後に文字の本源を得たりと為すべけんや。また葉郎古切、音魯。『楚辞・九章』惟佳人の独り懐ふや、芳椒を折って自ら処す。曾て歔欷して嗟嗟たり、独り隠伏して思慮す。按ずるに本は思に従ふ。『説文』『玉篇』皆思部に帰す。『字彙』心部に併入せるは、考査に便ならしむるが為なり。考証:『大学』安じて而る後に能く慮ず。【朱注】事を処すること精しく詳かなるなり。謹んで原文に照らし「謂ふ事を処すること精しく詳かなり」と改む。