康熙字典解説
康熙字典の原典を見る(第 82 ページ)
【子集上】【丿部】乑;康煕字典の画数:6;頁碼:82 頁 15 行
『玉篇』に「丘林切」と音注される。
『説文解字』によれば、読みは「欽崟」に似て、意味は衆人が立つさまという。
また『広韻』に「魚金切」、『集韻』に「魚音切」とあり、読みは「吟」に同じく、意義も同じである。
また「攀」の古文字形でもある。
揚雄『反離騒』に「纍既乑夫伝説兮、奚不信而遂行」とある。
顔師古の注に、「乑」は古の「攀」の字にして、すでに傅説を攀じ援引したならば、何ぞその説を信ぜずして、自ら窮困して去るや、と解する。
『正字通』によれば、「乑」は「衆」の異体字なりとし、「乑」と「衆」は音義ともに同じく、これ本字すなわち本義に基づく説なるも、「衆」に「欽」の読みなきことを知らざるなり。『説文解字』に「乑」の読みは「欽崟」に似たりといい、「衆」の音注は「之仲切」にて、両者の反切はもとより異なる。しかも「乑」は「衆人立つ」と解し、「衆」は「多」を意味し、字形は「乑」と「目」より成りて、直ちに「衆」に等しいにあらず。『玉篇』『広韻』ともにこの説に従うものを、いかにして「魚音切」の音注が孫氏(『唐韻』を著す)の誤りといえようや。楊氏(『韻経』を著す)に至りてこれを「衆」の古文となすは、また曖昧模糊たる見解なり。
また『漢書』の注に晋灼曰く、「乑、慕うなり」。顔師古曰く、「乑は古の攀の字なり」。これまた所拠いずくんぞ知るべからず。
『正字通』にいわく、『漢書』の原文はもと「从」と作り、古の「從」の字を用いて、誤って「攀」とせしものならん、恐らく亦深信すべからずと。
さらに諸々の韻書はみな「乑」と作るに、独り『正字通』のみこれを改め、「亻」の下に「人人」を加えて作る。「人」部に既に「𠈌」の字あるを考うるに、この字もまた両者を混淆すべからず、ここに特にこれを正す。字形は「亻亻亻」と作る。